北パブコラム(第22回):職務質問を拒否することはできないのか(弁護士 諸橋 仁智)

  • 2016.10.25 Tuesday
  • 10:27

 警察官からの職務質問は拒否できないのでしょうか。

 警察官から声をかけられて、「カバンの中身を見せてください。」などと協力を要請された経験がある方は多いでしょう。

 用事があって急いでいる、所持品を他人(警察官)に見られたくない等、理由は様々ですが、職務質問に協力したくないこともあると思います。

 

 実際のところ、職務質問への協力を拒否することは非常に困難です。「協力しません!」とはっきりと拒否の意思表示をしても、警察官はあなたの行く手に立ちふさがり、「そんなこと言わないで、お願いしますよ。」と執拗に協力を求めてきます。その場から立ち去ろうとすれば、あなたの肩や腕に手をかけて、その場にとどまらせようとするでしょう。

 

 このような警察官の強引な行為は許されるのでしょうか。

 警察官職務執行法2条1項

 「警察官は、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者( 頬瑤牢に行われた犯罪について、若しくは犯罪が行われようとしていることについて知っていると認められる者(◆砲停止させて質問することができる。」とあります。つまり、“蛤瓩侶疑がある者や犯罪の参考人的立場の者を、停止させて質問することができるのです。

 しかし、「停止」させるとは、相手方が自らの意思で停止するように求めることができるにすぎません。「行かないで下さい。」等の説得は許されますが、「協力しないのならば逮捕する。」等の心理的な強制を加えることは許されません。

 では、肩や腕に手をかける行為はどうなのでしょうか。このような行為は、あまりに強引で違法のようにも思えます。しかし、このような行為も、「相手方を説得するための行為」として、違法とはならないとされています(昭和51年3月16日最高裁決定)。

 

 以上の通り、職務質問において警察官は、相手方を説得するために、しつこくお願いをすることや行く手に立ち塞がること、肩や腕に手をかけて立ち去らせないようにすることができるのです。

 

 しかし、それでも「絶対に職務質問に協力したくない!」という場合は、警察官からの説得に対し、粘り強く拒否の意思を表示し続けるしかありません。結局、警察官に許されているのは説得をすることなのですから、説得をされた上でも捜査に協力したくないという強固な意思を表明するのです。

複数の警察官に囲まれて長時間の説得をされるわけですから、大変なプレッシャーです。警察官は体育会系出身が多いですから、体は大きく、説得には迫力があります。根負けして(不本意ながら)、職務質問に応じてしまうことが通常のようです。

 

 ところで、職務質問の過程で薬物犯罪の嫌疑が高まったとして、警察官が強制採尿令状や捜索差押令状の発付を請求することがあります。この場合は、純粋に職務質問として行われている段階の次のステージに移行して、より強引な行為も認められるとする考え方が主流です(二分論,平成22年11月8日東京高裁判決参照)。

 しかし、令状の発付は裁判官が関与しますが、令状を請求すること自体は警察官の判断だけでできます。裁判官が審査をする前の段階であるのに、令状を請求しただけで警察官の職務質問の権限が大きくなるという考え方には違和感を覚えます。最近の判例では、二分論を否定して、令状請求後の警察官の強引な行為を違法とした判断がなされました(平成27年3月4日東京高裁判決)。

 

 普段、交番で道案内などをしてくれる「お巡りさん」は、とても親切で頼りがいのある存在です。しかし、犯罪の嫌疑が認められる相手に対しては、普段のやさしい「お巡りさん」からは想像できない強硬な態度に変わります。

 犯罪予防のためとはいえ、警察官の行為は目的のために必要最小限度のものでなければなりません(警察比例の原則,警察官職務執行法1条2項)。職務にまい進するあまり、行き過ぎた行為をすることは許されません。最近の判例では,警察官が捜査対象者の車にGPSを取り付けた捜査が違法とされました(平成28年6月29日名古屋高裁判決)。

 

 違法な捜査によって収集された証拠には、証拠能力が認められません。警察官の強引な職務質問によって収集された証拠の証拠能力を争いたい場合は、当事務所までご連絡下さい。

 

弁護士 諸橋 仁智

北パブコラム(第21回):トラブルをどこに相談していいのかわからないあなたへ(弁護士 鈴木 加奈子)

  • 2016.10.19 Wednesday
  • 15:03

 私たちの事務所は、毎年行われる足立区の8士業による「よろず無料相談会」に参加しています。今年は、11月5日(土)13時から、足立区勤労福祉会館(綾瀬プルミエ内)にて開催されます。詳しくは、当事務所までお問い合わせください。

 「士業」(しぎょう)という言葉は、聞きなれない方も多いかと思います。士業とは、〇〇士という名称の専門資格を有する職業の俗称です。「さむらい業」ということもあります。 今回の相談会には、行政書士、建築士、司法書士、社会保険労務士、税理士、土地家屋調査士、不動産鑑定士、弁護士(あいうえお順)の8つの士業が参加します。

 各士業の中には、名称を聞いても、どんな仕事をするのかピンとこない専門家もあるのではないでしょうか。

そこで、相談会でも例年相談件数の多い相続の場合を例に、それぞれの士業にどのような相談ができるのか、ご説明します。

 

 Aさんが亡くなったとしましょう。Aさんの相続人は、配偶者と子供2人の合計3名だったとします。3人の相続人で話し合いをして、Aさんの遺産の分割について特に争いはなく話し合いがまとまったとします。このように遺産分割について争いがなければ、その内容を行政書士さんに依頼して、遺産分割協議書を作成し、その後の遺産分割手続(預貯金の解約など)をすすめることができます。

 Aさんによって生計を維持していた配偶者は、遺族年金がもらえるかもしれません。遺族年金をもらう要件を満たしているのかどうかよく分からなければ、社会保険労務士さんに相談することができます。仮にAさんが職場で仕事中に亡くなられた場合、労災保険からの給付が受けられるかも知れません。労災について、社会保険労務士さんに相談することも可能です。

 遺産の中に、不動産があった場合は、司法書士さんにお願いして相続登記をすることになります。Aさんが会社の役員をしていた場合は、役員変更の登記を司法書士さんに依頼することもできます。

 Aさんの遺産の評価額によっては、相続人3名が相続税を支払うことになります。相続税を負担しなければならないのか、負担するとしたらいくらになるのか、税務署への申告はどうしたらよいのか、税金については、税理士さんに相談して下さい。

 残念ながら、3人の相続人で話し合いがまとまらなかった場合、遺産分割でもめてしまった場合は、弁護士に相談して下さい。裁判所で遺産分割の調停を行ったり、裁判を行ったりする必要がでてくることもあるでしょう。

弁護士が代理人として交渉や調停をはじめたら、Aさんの遺産である不動産がいくらなのか、相続人間でもめてしまうことがあります。そんな時は、不動産鑑定士さんにお願いして、不動産の資産価値を評価してもらうことになります。

 遺産である不動産の分け方を争っているときに、相続人である自分がある土地を相続した場合に、その土地上に自宅を建てることはできるのだろうか、どのくらいの大きさの自宅が建てられるのだろうか、自宅が建てられないなら土地を相続してしょうがないのだけどといった問題が生じることも考えられます。その場合は、建築士さんに相談して下さい。

 建築士さんに相談して、自宅も建てられることが分かり、不動産鑑定士さんの評価をもとに、代償金(不動産を取得しない相続人と取得する相続人との調整のために支払われる金銭)の額についても相続人間で話がまとまったとしても、司法書士さんにお願いして土地の相続登記をしようとしたら、隣の土地所有者との間の土地の境界(筆界)がわからないということがあります。こんなときは、土地家屋調査士さんに相談して、隣の土地所有者の立ち合いのもと、土地の境界(筆界)を特定することになります。Aさんの遺産である大きな土地を2人の相続人でわけて相続することになれば、分筆登記が必要になります。土地家屋調査士さんに依頼して、分筆登記のために土地を測量してもらうこともできます。

 

 このように相続にあたり、さまざまな問題が発生し、それぞれの分野の専門家に相談しなければならないという場合も考えられます。

 弁護士のところに相談に行ったら、税金は税理士さんのところに相談に行って、登記については、司法書士さんに相談に行くことになりと大変面倒なことになります。もちろん各士業で重なる分野もあり、ある程度の相談には対応したり、士業間の連携を深めて、相談者の方があちこちいかなくても良い様にと考えていますが、「餅は餅屋」、その分野の専門家に相談するのが一番ではあります。

 

 そこで、各分野の専門家が一同に集まって、みなさまのご相談に対応しようというのが、8士業による「第7回 よろず無料相談会」です。相談される方は、あちこちの専門家に相談して回る必要がなく、1回で関連する各分野の専門家に相談することができるのです。もちろん、相談内容は相続問題に限られませんし、各士業が対応可能な相談内容も前述のものに限られるわけではありません。

 11月の相談会は、足立区の共催で行われるため、対象を足立区在住・在勤・在学の方に限っていますが、同様の士業合同による相談会は、各地で開催されています。どこに相談したらよいか迷っている方、一度相談に行ってみてください。

 

弁護士 鈴木 加奈子

 

 

 

北パブコラム(第20回):性犯罪について(弁護士 盒供―喇А

  • 2016.09.16 Friday
  • 10:19

はじめに

 弁護士としてそれなりに経験を重ねていく中で、いわゆる性犯罪事件に関わることは、決して少なくはありません。

 もちろん、性犯罪といっても、電車内でのチカンや強姦、児童ポルノ関係など多岐にわたりますが、ここでは最近、話題になっている強姦事件について、少し申し上げたいと思います。

 

性犯罪根絶の必要

 まず、性犯罪というものが与える被害は、本当に甚大なものであることを最初に指摘しなければなりません。まさにその人格の全てを踏みにじるものである、と言っても言い過ぎではないでしょう。我が国でも勇気あるサバイバーの方が本を出版されています。代表的なものとしては「STAND−立ち上がる選択」、「性犯罪被害にあうということ」などが挙げられます。これらの本を読むとき、性犯罪事件の弁護を引き受けることの重さを改めて強く意識しないわけにはいきません。

 

性犯罪の容疑者とされるということ

 このように性犯罪が女性に与えるダメージが極めて重大であることの裏返しとして、性犯罪の加害者には社会からの厳しい非難が向けられます。これは、ある意味では当然のことです。しかし、我が国の社会では、往々にして「逮捕されたというだけで有罪」という認識が一般的になっているように思います。これは大変残念なことです。

 逮捕される場合、一定の「疑い」が存在することは事実です。でも、それは一定の「疑い」が存在しているという以上の意味を持ちません。

 近時、有名芸能人が強姦致傷罪を犯したという嫌疑で逮捕されるという事件がありました。報道機関は、彼が犯罪者であるという前提に基づくニュースを繰り返し報道しました。

*  *  *

 無罪推定の原則、という言葉があります。

 簡単に言えば、有罪判決が確定するまでは被告人は無罪と推定されるという意味です(判決確定後の再審の場合は例外的ですがここでは触れません)。これは、無罪と推定される以上、その人が有罪であることを検察官が証拠によって証明しなければならない、というルールを導きます。

 そして、その証明の程度については「証拠を検討した結果、常識に従って判断し、被告人が罪を犯したことが間違いないと考えられる場合には有罪とし、逆に常識に従って判断し、有罪とすることに疑問があるときには無罪としなければならない」とされています。

 つまり、一定の「疑い」があったとしても、それだけで有罪であると決めつけてはならない、ということが、基本的なルールになっているのです。

 

無罪推定の原則と社会の受け止め

 冒頭に申し上げたとおり、性犯罪は根絶しなければなりません。しかし、その時点で、無罪と推定されている人(つまり、有罪と決まったわけではない人)に対して、あたかも有罪であることが前提となるような決めつけをすることは極めて危険なことです。

 そのような決めつけをしない。そのことによって、えん罪被害が少なくなっていくでしょうし、ひいてはそれが犯罪を減少させていくことにもつながっていくと思うのです。なぜなら、えん罪被害が生まれる裏では、真犯人が処罰を免れているわけですから。

 「無罪の推定」は刑事裁判においては当然ですが、裁判の場以外でも、取り入れるべきルールだと考えています。

 ぜひ、無罪推定の原則を前提として事件報道を見ていただけるよう、そのような方が一人でも増えていくよう、念願しています。

 

最後に

 今回、大々的に報道された事件は、容疑者に対して不起訴処分が下されたようです。検察がその判断に至った理由は明らかにされていませんから、その処分の当否を検討することはできません。弁護人のコメントにあったように、事実関係が明らかにならなかったことが影響しているのかもしれません。示談が成立したことが重視されたのかもしれません。もしかしたら、被害女性とされている方が世間の好奇の目にさらされることを避けたいと強くお考えになったのかもしれません。真実はわかりませんし、憶測で物を言うことは真実を遠ざけてしまう可能性もあります。

 特定の事件を捉えて、推測で気軽に意見をいうには、性犯罪というものは、あまりに「重すぎる」事件類型です。

弁護士 盒供―喇

北パブコラム(第19回):「時効かもしれない?」と思ったら(弁護士 戸癲々海)

  • 2016.03.28 Monday
  • 16:30

 「今ならもう時効だろうから言うけど、あの時、父さんのギターを壊しちゃったのは僕なんだ。〇〇は悪くないんだ。」­­―――みなさんも、「時効」という言葉を枕詞に、今まで言えなかった真実を告白したことはありませんか。
このように、日常会話でも「時効」という言葉は使われますが、今回は、法律上もよく問題となる「消滅時効」についてご説明します。
 
 簡単に説明すると、一定の期間(時効期間)が経過すれば、お金の支払いを請求できなくなるなど権利自体が消滅してしまう制度です。
 
 時効期間は、通常、個人間では10年、会社や事業者が行う事業に関するものは5年となっています。たとえば、あなたがご友人に車を売った場合、10年過ぎると売却代金を請求できない可能性があります。業者に売った場合なら5年という具合です。
もっとも、時効期間にも例外があり、病院の診療代金は3年、未払いの給料や残業代は2年、飲食店のツケは1年など色々あります。120年以上前に出来た規定なので、その合理性に疑問が持たれ、法律の見直し作業が進められています。近い将来、多くの請求権が、原則として5年で時効となる旨規定されます。
 
 請求する側としては、時効期間内に、〆枷修魑こす、あるいは、∧ГβΔ忙拱У遡海鯒Г瓩気擦襦△覆匹良要があります。逆に、請求される側からすれば「時効なので支払を拒否します。」と明確に拒まなければなりません。時効期間が経過していることに気づかずに一部でも支払ってしまったら、後から支払を拒んだり、既払金の返還を求めることはできない可能性があります。
 とはいえ、実際に請求ができないかどうか、払わなくても済むかどうか、は判断が難しいことが多いです。簡単に諦めずに、まずは弁護士にご相談ください。当事務所では、ご相談の予約を受け付けていますので、お気軽にご相談ください。

 

弁護士 戸癲々海
 

北パブコラム(第18回):マンション生活でのトラブル

  • 2016.03.09 Wednesday
  • 14:29
 マンションで暮らしていると、ペットの鳴き声、子どもの足音などが気になることがあります。
 ある程度は「おたがいさま」なのでしょうが、音の大きさや時間帯によっては、音を出している人に改善を求めるべき場合もあるかと思います。
 おだやかなやり方として、管理会社に頼んで、「お子さんのいるご家庭は足音にお気を付けください。」などというチラシをマンションの全部の部屋のポストに投函してもらう方法がとられることがあるようです。
 しかし、それでも相手に変化がなければ、やむなく訴訟などの法的手段を検討すべき場合もあるかもしれません。
実際に訴訟になった事例として、3〜4歳の子どもが廊下を走ったり、とんだりはねたりするときの音が原因で下の部屋の住人に生じた精神的な損害について、損害賠償責任を認めたものがあります(東京地方裁判所平成19年10月3日判例タイムズ1263号297頁)。
 判決では、音を出していた住人の対応の不誠実さや下の部屋の世帯の妻に不眠などの症状が生じていたことにもふれた上で、「住まい方や対応の不誠実さを考慮すると、本件音は、一般社会生活上原告が受忍すべき限度を超えるものであったというべき」と述べられています。
 こうした事件では、実際に騒音があったことを証明するための証拠を集めることも重要です。
 騒音の防止などを求めた訴訟において,証拠作成のため騒音を計測する専門の業者に支払った費用や報酬につき、その事案においては不法行為の立証のために必要不可欠であったとして騒音を出していた側にその支払義務を認めた裁判例もあります(東京地方裁判所平成24年3月15日LEX/DB25482551)。
 マンション生活でのトラブルは、生活に密着したものです。
 お悩みの場合は、解決までの毎日のストレスをなるべく小さくするという意味でも、早めの段階で弁護士にご相談されることが望ましいでしょう。
 当事務所では、ホームページでご案内のとおり、所内相談の予約を受け付けています。お気軽にご相談ください。
担当:弁護士 菊地 信吾

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